こうした国内におけるインターネットの普及が、携帯電話・スマートフォンの普及率が高める結果につながっている。ベトナム情報通信省の発表では、2016年度末時点で国内の携帯電話利用者は人口の 94%を占めており、スマートフォン経由でのインターネット利用者は人口の72%を占めるまでに至っている。
特に、LTE(4G)通信の急速な普及率は注目に値する。ベトナムにおけるLTE通信の商用サービスは2016年にようやく始められ、これは東南アジア諸国内では最も遅い国となった。しかし、VINASAによれば、LTEサービスの正式展開から1年半あまりで、LTE接続はベトナム人口の95%を占めるまでに至り、その急速な普及が伺える。

IT産業の基盤となるハードウェア産業
2017年、ベトナム国内のハードウェア産業に関わる企業は約3500社あり、IT業界全体の約9割に相当する600億ドル以上の売上でIT産業の成長に大きく貢献している。これまで世界的な大手IT企業から10億ドル規模の大型投資案件を呼び込んできた。その主な事例は次の3つである。
・韓国サムスングループはベトナム国内に8つの工場と1つの研究センターを保有し、総投資額は173億ドル以上、ベトナム従業員数は17万人の規模に及んでいる。
・同じく韓国のLGエレクトロニクスはベトナム北部ハイフォン市にて、携帯電話機の製造・組立工場の建設に約15億ドルを投資した。
・ホーチミン市ハイテクパーク(SHTP)でノートパソコン等のモバイル通信機器のICチップを生産するインテル社の工場は、投資額が10億4000万ドルに上り、現在世界中で生産されているインテルCPUの約80%が同工場のICチップである。

安価で高スキルのIT人材に支えられたソフトウェア産業
外国企業による対ベトナム投資において、ソフトウェア開発は最も成長している分野の1つである。2017年にソフトウェア及びデジタルコンテンツ産業の収益は約30億ドル、ITサービスの収益は約60億、ソフトウェア輸出の収益は10億ドル以上を達成した。特に、ここ数年は、ベトナムIT人材の安価な労働力と高い技術に注目が集まり、オフショア開発が盛んとなった。
更に、ベトナムのソフトウェア産業は近年になり、国際的にも評価され始めている。2017年に発表されたコンサルティング会社のA.T.カーニーによる、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)開発に適した国の評価レポートでは、インド、中国、マレーシア、インドネシア、ブラジルに続き、ベトナムは55か国のうち6位に選出され、これは2016年よりも5位上昇した結果となった。また、IT分野の調査や助言を行うアメリカの大手企業、ガートナー(Gartner)による「アジア太平洋地域におけるITサービスのアウトソーシングの評価」という報告書によれば、ベトナムはアジア太平洋地域で6番目の技術移転先として選出されている。
また、ソフトウェア開発プロセスの成熟度を評価する国際的な指標のCMMI(Capability Maturity Model Integration)であるが、CMMI証明書を持つベトナムの企業数は25社に及び、最高の成熟度レベルであるレベル5を達成した企業は5社に及んでいる(FPTソフトウェア、Luxoft、Global Cybersoft、Harvey Nash Vietnam、Toshiba Vietnam)。これは、シンガポールやマレーシア、フィリピンよりも多く、CMMI資格を持っているソフトウェア企業数の面でASEAN諸国の中でトップの国となった。
このように、ベトナムはソフトウェアを開発する上で魅力的な国の1つとなりつつあり、更なる成長が期待される。

成長が顕著なモバイル向けデジタルコンテンツ産業
デジタルコンテンツ分野においては、2017年の売上高は約10億ドルを超え、登録数は企業3000社、従事する労働者は46,000人以上に拡大した。2015年から、デジタルコンテンツ市場は急激な変化と発展を遂げており、モバイル向けのデジタルコンテンツサービスの発展は特に著しい。また、ベトナムではフェイスブックの利用が盛んである。アカウント数の面で世界第7位にランクインしており、ユーザー数は5800万人を超える。デジタルコンテンツサービスを提供する代表的な大手企業としてはVNG、VTCIntercom、VMG、FPTMedia、BHMediaがあげられる。

IT産業に関わる法的環境
ベトナム政府はIT産業の発展に資する法整備を進めてきた。例えば、持続可能な開発と国際的な要件を満たすアプリケーション強化、IT開発に関する2014年7月1日付けの政治省決議第36号;電子政府に関する2015年10月14日付けの政令第36a号;2020年まで(2025年を視野に入れる)IT産業開発を目的にするプログラム」を承認する2015年3月27日付けの首相決定第392号;「2016年-2020年の段階で国家機関の活動におけるITアプリケーションに関する国家プログラム」を承認する2015年10月26日付けの首相決定第1819号等である。
また、下記はソフトウェア産業をはじめIT産業の開発に有利な環境を創出するための主な法的文書の一覧である。
・投資優遇について:2005年・2014年の投資法、及び2006年9月22日付の政令第108/2006 / ND-CP号、2015年11月12日付けの政令第118/2015/ ND-CP号を含むガイダンス文書。
・税率・輸入優遇措置について:2010年の輸出入税法、及び2010年8月13日付けの政令第87/2010/ ND-CP号。輸出入税法は2016年に改訂されている。
・付加価値税優遇について:2008年・2013年の付加価値税法、及び2008年12月8日付けの政令第123/2008 /ND-CP号、2013年12月18日付け政令第209/2013 / ND-CP号、2013年3月31日付けの財務省通達第219/2013/TT-BTC号を含むガイダンス文書。
・企業所得税優遇について:2008年・2013年・2014年の企業所得税法、および2008年12月11日付け政令弟124/2008/ND-CP号、2013年12月26日付け政令第218/2013/ND-CP号、2015年2月12日付け政令第12/2015/ND-CP号を含む各ガイダンス文書。

・国営企業による市場の展開について:国家機関におけるITサービス・リースに関する施行規定についての首相決定第80/2014/QD-TTg号は、各企業が政府へITサービスの提供を可能としている。更に電子政府に関する2015年10月14日付け政令第36a/NQ-CP号はオンライン公共サービスや政府内部のITシステムを提供する企業へ更なる市場拡大のチャンスを与えるものである。
・ビジネス環境について:2015年7月1日より有効となった改正投資法、及び改正企業法は、制度改革IT産業環境をはじめ、ビジネス環境の改善においてベトナムの2点の重要な法律と考えられている。特に、ベトナム政府は、2016年には国際統合が益々拡大していく中、IT企業の競争力を向上させ、IT開発の投資誘致を推進する事を目的とし、ベトナムにおけるIT開発、及び応用を促進する税制優遇政策に関する2016年5月26日付け政令第41/NQ-CP号を公布した。政令第41/NQ-CP号には、法人所得税、個人所得税に関する多くの優遇政策が掲げられている。また、政府はスタートアップ企業をはじめ、中小企業向けの多数の支援政策を含む中小企業支援法を国会で審議し、現在は可決を待つ段階となっている。

今後のIT産業の発展の見通し
上記のことから、ベトナム政府の積極的な推進により、ベトナム国内の通信環境やITインフラは近年になって急速に整備され、それに伴いIT産業も急成長している。ITインフラは重工業のプラント建設と異なり、少ない時間とコストで整備することが可能である。工業力が未熟でインフラが未整備であるベトナムのような新興国でも、IT産業は急激に成長することができる。更には、IT産業に関する法整備やエンジニア等の人材、ITインフラといった各種条件が整いつつあり、IT産業は今後のベトナム経済の基盤となり、IT産業の発達が他の分野の成長に繋がることが期待される。一例だが、大手ECサイトのアマゾンはベトナム進出の方針を打ち出している。今後、中国のアリババ等との競争を通じ、ネット通販市場の成長だけでなく、物流業、小売業の成長にも大きな影響を与えるだろう。
今後、ベトナムのIT産業は発展の余地が大きくあり、外国企業にとっても重要な投資機会となることが大いに期待される。