ベトナムの廃棄物発電市場:投資奨励政策が拡充(後編)

 今回の記事では、前回の記事に続き、ベトナムのごみ(廃棄物)問題について考察していきたい。前回の記事では、急速に進む都市化、人口増、経済発展に伴い、都市部を中心にごみの量が増えている一方、そのほとんどが埋立処理されており、適切に処理されていないという現状や課題について述べてきた。今回の記事では、ごみ問題に対するベトナム政府の方針や目標、今後の日本企業にとっての機会について分析していきたい。

廃棄物処理に対してベトナム政府が定める9のターゲット

 固形廃棄物の処理及び管理、リサイクル目標については、2012年9月5日で首相決定された「2025年までの固形廃棄物の管理に関する国家戦略、2050年までのビジョン」(No. 1216/QĐ-TTg)で詳しく定められている。廃棄物の適切な管理と環境汚染の改善を目的とし、2020年までの9のターゲット目標が設けられている。具体的には以下の通りである。

(1) 発生した生活廃棄物の90%を回収し、適切に処理する。また、そのうち85%はリサイクル、再利用、エネルギー利用、有機肥料の製造に活用する
(2) 都市部で発生した建設現場での廃棄物の80%以上を回収し、そのうち50%をリサイクル、再利用する
(3) グレードⅡ以上の都市(政府が定める都市のレベル)では、セプティックタンクのスラッジの50%、それ以外の都市では30%以上を回収し、適切に処理する
(4) 2010年と比較して、スーパーマーケットや商業施設で使用されるプラスチックバッグの使用量を65%削減
(5) 生活廃棄物を処理する施設を持つ都市の割合を80%以上までに高める
(6) 非有害な産業廃棄物の90%を回収し、適切に処理する。また、そのうち75%を再利用、リサイクルする
(7) 工業団地や工場等で発生する有害廃棄物の70%を適切に処理する
(8) 医療機関や病院で発生する非有害廃棄物、有害廃棄物の100%を回収し、適切に処理する
(9) 農村部の住宅地で発生する固形廃棄物の70%、伝統工芸村で発生する固形廃棄物の80%を回収し、適切に処理する

一方、2025年までのターゲット目標については、上記の9の項目について、数値を引き上げた形で設定されている。こうしたターゲット目標達成のためのアクションプランとして、インフラ建設や廃棄物処理のための料金徴収、廃棄物収集ネットワークの強化等が同規定では記載されている。この目標が設定されたのは2012年であるが、前回記事でも述べた通り、今年2020年の廃棄物処理の現状を見ても、多くのターゲット目標が未達であると考えられる。

今後は廃棄物のエネルギー利用が普及か

 課題が山積するベトナムの廃棄物問題であるが、今後は廃棄物を燃料として活用したエネルギー利用(発電への利用)が進んでいくのではないかと筆者は考えている。ベトナム政府は以前より廃棄物発電に関する投資奨励策を策定してきた。その代表的な優遇措置がFIT制度(固定価格買取制度)である。発電事業者が廃棄物を燃料として発電した場合に、ベトナム電力公社(EVN)が20年間にわたって電力の全量を買い取るという優遇措置だ。
廃棄物発電のFIT制度について定めた首相決定(No.31/2014/QD-TTg)は2014年時点で定められており、同規定によれば、直接燃焼の場合、10.05USセント/kWh、廃棄物埋め立て地から収集された燃焼ガスの場合、7.28USセント/kWhのFIT価格が定められている。商業運転の開始時期についても期限は設けられていない。
このFIT価格(直接燃焼:10.05USセント/kWh)は風力発電や太陽光発電、バイオマス発電のFIT価格と比較しても最も高いFIT価格である。今後、ベトナム政府が廃棄物発電のFIT価格を引き上げる可能性は大いにあるだろう。バイオマス発電のケースでも、以前のFIT価格が低く設定されたために、投資家が現れず、政府は2020年3月になって価格を引きあげた。コージェネレーションの場合、バイオマス発電の旧FIT価格は5.8セント/kWhであったが、現在は7.03セント/kWhまでに引き上げられた。
より重要な点は、今後さらにFITが引き上げされた場合、既に運転開始をしていても、投資家にとって有利な条件(より高いFIT価格)が適用されるということである。これはベトナム投資法(No.61/2020/QH14)により、投資家の利益を守るための措置として規定されている。事実、2014年4月24日以前に既に商業運転しているバイオマス発電所でも、PPA契約における残りの期間は、より高い改定FIT価格が適用されることが法規定に明記されている。

FIT制度以外の優遇措置が充実

 廃棄物発電の場合、FIT制度以外の優遇措置もいくつか設けられている。まず第一に挙げられるのは、ごみ処理費(チッピングフィー)である。廃棄物処理のために政府が提供するもので、その価格は人民委員会や廃棄物の種類によって異なるが、、概ね固形廃棄物1トンあたり300,000 ~ 500,000VND(12.8~21.4USD/トン)である。
次に土地の賃貸にかかる税であるが、廃棄物発電の優遇制度を定めた首相決定(No.24/2014/QD TTg)によれば、電力案件、電力系統接続と変電所工事のための土地使用とリース代金を減免できる。また、ベトナム投資法の第15条および第16条でも、廃棄物発電は奨励される投資分野として指定されており、土地の賃貸、法人税、輸入税においても減免税を受けることができると明記されている。これに加え、政府議定(No.35/2017/NĐ CP)によれば、廃棄物発電の場合、立地によっては 100%土地の賃貸税が免除される。
最後に、廃棄物の運搬であるが、事業者が廃棄物を自ら回収し運搬する必要はなく、コストを負担する必要もない。政府系の廃棄物処理公社が廃棄物発電所まで運搬してくれるためだ。

廃棄物処理案件の売買やM&Aの動きも拡大

 こうしてみると、廃棄物発電にかかる優遇措置は他の再生可能エネルギーと比較しても非常に手厚い。かつ、2020年2月にベトナム政治局中央が2030年及び2045年までの国内エネルギー開発の長期的な方針として、「2030年、2045年までのベトナムの国家エネルギー開発のための戦略的な方向性とビジョン」(No.55-NQ/TW)を定め、再生可能エネルギーの開発を優先するという方針を掲げており、これまで投資が進んで来なかった廃棄物発電についても更なる優遇措置の追加等を通じて投資奨励策を拡充する可能性が高い。この方針では、エネルギー総供給に占める再生可能エネルギーの割合について、2030年までに約15〜20%、2045年までに25~30%まで引き上げることが定められている。

 以上、廃棄物発電に関する政府の目標や機会について述べてきた。ベトナムの廃棄物発電市場への進出においては現地パートナーの選定が非常に重要となるだろう。現状、商業運転を開始している廃棄物発電所は非常に少ないと考えられるが、一部では商業運転済みの案件や組成された案件の売買、M&Aといった動きが近年になって拡大している。ベトナムの廃棄物発電市場への進出にあたってはどのような参入形態を行うか、事前の戦略立案が極めて重要なポイントとなるだろう。

ONE-VALUE INC.
経営コンサルティング事業部
再生可能エネルギーチーム

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