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再エネ大国ベトナム:屋根置き太陽光発電が急成長

ベトナムで屋根置き太陽光発電への投資が進んでいる。太陽光発電の固定価格買取制度(FIT制度)の期限が、2020年12月末と期限が迫っていたが、期限前にベトナム全国で一挙に屋根置き太陽光発電の導入が進んだ。大型石炭火力の開発を進めてきたベトナム政府であるが、近年になり、再エネ開発へ大きく方針を転換。この記事では太陽光発電の開発動向において、最新動向を考察していきたい。

ベトナムは東南アジア域内でも太陽光発電の開発ポテンシャルが高い国の1つ

ベトナムは東南アジア域内でも特に日射量の条件に恵まれた国である。アメリカ合衆国国際開発庁(USAID)・アメリカ国立再生可能エネルギー研究所(NREL)の分析資料によれば、ベトナムは太陽光発電に適する土地が79万k㎡程度存在している。特に、ダナンより南に位置する南中部から南部は日射量の条件が良好な地域で、太陽光発電の開発ポテンシャルが非常に高い地域である。一方で、ベトナム政府は他の東南アジア諸国と比較しても、太陽光発電の開発目標については非常に高い目標値を掲げている。具体的にはベトナム政府は2030年までに太陽光発電の設備容量12,000MWの導入目標を掲げており、これはタイやインドネシア、フィリピンと比較しても高い目標値であることが分かる。

FIT期限を目前に僅か1か月で7,000MWp相当が新規導入

ベトナム政府が定めた太陽光発電のFIT制度の期限は2020年12月末に迫っていた。ベトナム電力公社(EVN)による20年間の電力全量買取(8.38セント/ kWh)が適用されるには、12月末までに商業運転を開始することが各プロジェクトに求められる。

期限を目前にベトナム国内では太陽光発電の開発は一挙に進んだ。ベトナム電力(EVN)によれば、12月31日までに101,029件の屋根置き太陽光発電プロジェクト(最大9,296MWp)の総設備容量で電力システムに接続されたという。前月の11月末時点では、74,281件(2,876MWp)が電力システムに接続されていたため、僅か1か月で新たに7,000MWpが導入された計算になる。

現地報道によれば、期限となる12月31日を目前とした数日間に導入が進んだようである。12月28日時点でベトナム全国で合計5,289MWpに相当する86,003プロジェクトが商業運転を開始済みであった。一方、12月31日には全国合計で9,296MWpに相当する101,029プロジェクトが商業運転開始済みとなった。

現地国営メディアによれば、2021年1月1日時点で、ベトナム全国で商業運転を開始した太陽光発電プロジェクトは19,400MWpに及んでおり、このうち約47.9%に相当する約9,300MWpが屋根置き型プロジェクトである。全国の太陽光発電プロジェクト19,400MWpは約16,500MWに相当し、ベトナム全国の総設備容量の約25%を占めている。また、2020年の1年間、ベトナムの太陽光発電システムによる総発電量は106億kWhに及び(このうち屋根置き型は11億6,000万kWh)、全国の総発電量の約4.3%を占める結果となった。

今後の見通し:屋根置き太陽光発電のセカンダリー市場の発展

太陽光発電の開発が一挙に進んだベトナムであるが、2021年以降のFIT制度の取り扱いについては、ベトナム政府から公式のアナウンスがまだ出ていない状況である。ベトナム政府内では入札制度への移行や直接電力供給契約(DPPA:Direct Power Purchase Agreement)のモデル導入が検討されており、既に試験的な動きも始まっている。DPPAにより、国家送電網に接続された太陽光プラントを有する発電事業者を対象に、産業用需要家との間で直接電力供給契約を締結することも可能になる。現時点では正式な決定は出ていないものの、今後のベトナム太陽光発電はFIT制度の延長、または新しいモデルの導入により、発展が続いていくものと考えられる。

また、屋根置き太陽光発電はセカンダリー市場も発展している。案件の多くが許認可の取得が簡素化される1MW未満の案件であると考えられ、日本企業にとって、屋根置き太陽光発電の買収や出資は、ベトナムでの太陽光発電への投資を考える上で、収益性や許認可の確認、商業運転開始後のオペレーション、現地ネットワークの開発等に関する知見やノウハウを蓄えるための良い機会になると考えている。今後も引き続き、ベトナムの太陽光発電市場の動向を注視していきたい。

ONE-VALUE INC.
再生可能エネルギーチーム

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