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2020年前半期のベトナム農林水産業の動向

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響にも関わらず、2020年前半期(1~6月)のベトナムのGDP成長率は1.81%を記録している。また同時期のGDPの中で農林水産業の生産高が全体の15%近くを占めている。ベトナムというとITや製造業における発展が多く取り上げられるが、もともとベトナムは人口の半分以上が農林水産業に従事しており、今後はハイテク農業や水産業の養殖技術の技術の発展、さらに木質ペレットなどの木材製品を利用したバイオマス発電など、今後発展していくポテンシャルが大きい分野である。

農業

2020年前半期の農業の総生産額は269兆1670億ベトナムドン(約1兆2350億円)であった。その中で稲の総作付面積は302万4000ヘクタール、稲の生産量は前年同時期比で56万8000トン多い1990万1000トンであった。そのうち、メコンデルタが作付面積、生産量の両方で大きな割合を占めており、作付面積におけるメコンデルタの割合は51%、生産量における割合は53%を占めている。メコンデルタのコメ生産の主な特徴は、他の地域で生産されたコメの多くが自家消費に回されるのに対して、メコンデルタで生産されたコメの多くが商業用として流通している点である。

また家畜の飼料の生産量を見ると、水牛の飼料が163万6000トンと、牛の4万9000トン、豚の18万7000トン、家禽(鳥)の70万2000トンと比べて大きい割合を占めている。水牛はベトナムでは農業を行うには欠かせない労働力であり、鋤で畑を耕すなど人間が行うには負担が重すぎる作業を負担している。ベトナムでは「人生の三大行事は、水牛を買うこと、結婚すること、そして家を建てること。」と言われるほど農民の生活の中で水牛は欠かせない家畜として捉えられている。

林業

林業における2020年前半期の生産高は17兆6820億ベトナムドン(約808億円)である。そのうち新たに造林された森林面積は前年同時期比から0.2%増加した10万6000ヘクタール、木材生産量は2%増加の752万6000立法メートル、さらに薪の生産量は0.9%増加の980万Sterである。またその一方で失われた森林の面積は1304ヘクタールとなっている。これは森林伐採による喪失もあるが、それより多いのは森林火災によるものである。森林火災の主な原因としては焼畑農業の延焼が多い。ベトナム政府は森林保護のために焼畑農業を減少させようと、森林保護に協力した農家への補助金などの政策を実施しているが、現金収入が乏しい農家にとっては焼畑農業による移動農耕が最も効率の良い農業形態であるため、農家だけでなく農家の現金収入を高めるための市場全体に対するダイナミックな政策が必要となるだろう。

水産業

水産業における2020年前半期の生産高は77兆8830億ベトナムドン(約3560億6000万円)である。生産量は1990万1000トンで、これは前年同時期より1.6%増加している。この内訳を見てみると、魚類が75%を占めており、エビ類が11%、その他が残りの14%となっている。特に近年は養殖の技術発展が目覚ましく、エビおよび白身魚(パンガシウス)の養殖が非常に多い。日本のスーパーでもベトナム産のブラックタイガーや、パンガシウスの切り身等が陳列されているのを見ることができる。2019年5月には三井物産がベトナムエビ養殖最大手のミンフー・シーフードに約35%を出資すると発表している。これは販売先を増やすほか、水質の遠隔管理などのデジタル技術を導入することによる効率化を図る目的がある。このように農業だけでなく水産業にも、ハイテク化の波が押し寄せている。


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