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ベトナム第8次国家電力マスタープラン(PDP 8)に関する最新情報

今回のレポートでは、ベトナムの第8次国家電力マスタープラン(PDP8)の草案について考察したい。ONE-VALUEは現地報道及び政府が公表した文書、ネットワークがある関係各所に対してヒアリング調査を行ったため、現時点で考察できる点を本記事にて整理した。

2021年2月9日、ベトナム商工省は「2021~30年における国家の電力開発基本計画及び2045年までの展望」(第8次国家電力マスタープラン、以下PDP8)の草案について関係省庁に通知・相談を行った。これに対し、各省庁は2021年3月17日までに回答することとなった。

再生可能エネルギーの開発は今後も継続する方針

2021〜30年におけるベトナムGDPの年間平均成長率は6.6%、2030〜45年では5.7%となる見込みであり、2030年の商用電力消費量の予測は4,910億KWh 、2045年までに8,770億kWhに達すると予測されている。

また、2030年までにベトナムの総発電設備容量は137.2 GWまで拡大する予測であり、そのうち石炭火力が27%、 ガス火力が21%で、水力が18%、 風力・太陽光及びその他の再生可能エネルギーが29%で、約4%が輸入、 その他が約1%となっており、再エネ開発に力点が置かれる見通しである。

また、2045年の電源開発における総発電設備容量は約276.7GWまで開発が進み、そのうち石炭火力が18%、ガス火力が24%、水力が9%、風力・太陽光及びその他の再生可能エネルギーが44%以上で、約2%が輸入 、その他が3%となるドラフトの内容となっている。特筆すべきは再エネ開発が2045年には容量ベースで44%まで拡大することであろう。

PDP8ドラフトは、改定PDP7と比較して、ベトナム政府が再生可能エネルギー(水力発電以外)の開発方針をさらに強化したことを示す資料となっている。より具体的には、再生可能エネルギーの国内の電源に占める割合として2020年に13%、2030年に30%、2045年には44%へと順次引き上げていくことが見込まれている。

 送電線システムの改善と開発の強化

さらに、PDP8ではベトナムの中部高原、南中部、北中部といった電源設備が集中するエリアからからホーチミン市や紅河デルタ地域といった電力需要が拡大しているエリアへ送電するため、PDP8ドラフトは500kV送電システムの開発を継続することを提案している。 北部、中部、南部間の送電をサポートするために相互接続された送電網を強化することも提案されている。

2021〜30年においては500kVの容量で合計約86 GVA、送電線の距離にして約13,000 kmを開発する必要があり、2031〜45年の間には500kVの容量で約103GVA 、送電線距離を約6,000 kmをさらに開発することが提唱されている。

※注記: GVA = Giga Volt-Ampere , 1 GVA = 1,000,000,000 VA (Volt-Ampere)

商工省は、この送電線開発においての送電線が電力供給の安全基準を予備的に満たしていることを強調している。 更には、スマートグリッドの適用及び送電における4.0技術の適用も研究され、PDP内で提案されている。

総投資額が増加すると予想される

今後の電力需要の増加を考慮すると、2021〜30年においては電源開発への総投資額は約1,283億米ドルが必要と試算されている。 その中で、電源開発が954億米ドルで、送電線の開発が約329億米ドルとなっている。2021〜30年の期間においては、年平均の投資額は電源開発が95億米ドル、送電線開発が33億米ドルで、合計で約128米億ドルに及ぶ。

2031年から2045年の期間における電源開発向けの投資額は電源開発が1,402億米ドルで、送電線開発が約521億ドルで、合計で約1,923億米ドルとなる。2031〜45年の期間においては、年平均の投資額は電源開発が93億米ドル、送電線開発が34億米ドルで、合計で約127米億ドルに及ぶ。

また、2021〜30年の期間では、発電の平均限界費用は8.8 UScent / kWhであり、2021〜45年は9.6 UScent / kWhと予測されている。 同時に、送配電の平均限界費用が2021〜30年は11.4 Uscent / kWh、2021〜45年が12.3 Uscent / kWhと予測されている。

正式な公表が今年2021年の前半期と見込まれるが、ベトナム政府が再エネ開発に大きく舵を切ったことは間違いない。今後、ベトナムの再エネ市場はさらなる発展を続けるだろう。

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