ベトナムにおける教育市場の最前線 ~STEM教育~

ベトナムにおける教育分野における投資額は2020年1~9月で8900万ドルに達し、前年同期比で58%増加した。コロナウイルスの影響で各分野における投資活動が下火になっている中で教育分野における投資額の上昇は注目に値する。ベトナムの一般家庭では総支出の実に40%が子供の教育に充てられており、また国の予算でも20%が教育分野に関する支出である。日本はOECD加盟国で下から2番目の割合である9.1%であることと比較するとベトナムが庶民、また国レベルでいかに教育を重要視しているかがわかる。

人と金が集まるところにはビジネスチャンスが生まれる。ベトナムの教育分野はいま最もホットな投資分野の一つである。今回はまず、ベトナムの教育に関する制度・市場の現状を整理していきたい。

1.ベトナムにおける教育課程

ベトナムでは日本と同じく小学校・中学校が義務教育となっている。ベトナムはもともと識字率が95%と先進国並みに高いことで知られているが、これは多くの子供がしっかりと義務教育を受けていることを意味する。大学への進学率は2016年のUNESCOの調査によると26%であり、他国と比べて低率ではあるが年々上昇している。

2.ベトナムの教育における公的セクター、民間セクター

すべての教育課程に対して公的な機関、民間の機関が存在する。例えば大学でも公立大学と私立大学が存在し、公立大学の学費が年間2~5万円と安価であるのに対し、私立大学の学費は年間35~100万円とかなり幅があり尚且つ高価である。しかし私立大学を含めた民間の教育機関に対する人気は根強く、多くの子を持つ親は自分の子供を公立の学校ではなく、私立の学校に通わせたいと考えている。その理由は、近年ベトナム国内で大きな支持を得ている国際的な教育手法が民間では取入れらており、語学だけではなく経済、工学、医学などの様々な分野で、他国の最新の教育を受けることができるからである。しかし民間教育機関の中では教員や授業のレベルが不均質であったり、カリキュラムが十分に整備されていない等の欠点もあるため、一概に民間の教育機関が公的機関よりも優れているとは言えない。とはいえ、国民の一般的感情としては民間の教育に熱い期待が寄せられていることは間違いない。

3.ベトナムにおいて広まるSTEM教育

上では主に高等教育機関の内容であったが、幼児教育の現場では現在STEM教育が大きな注目を集めている。STEMは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)およびMathematic(数学)の略。STEM教育は基本的に4つの分野に関連する必要な知識とスキルを学習者に提供するものとして理解されている。2000年代に米国で生まれた概念であり、最初はハイテク分野における適格者が労働市場に少なかったことから、国家レベルでそういった求人ニーズを満たすような人材育成を行なうという政策レベルで用いられた概念であった。

もともとSTEMという概念は初等教育から高等教育までの広い教育ステージに当てはまるフレームワークであるが、高等教育におけるSTEM教育の成否は往々にして初等教育での教育環境により決定されてしまう(幼少のころにSTEMにかかわる分野に興味を持った生徒が、高等教育の段階においてその分野で良い成績を残す傾向が強い)ことから、STEM教育では特に初等教育の段階が最重要視されている。そのため、公立・私立を問わず小中学校でSTEM教育のカリキュラムが積極的に取り入れらている。具体的にはブロックを使って自動で動くロボットを組み立てたり、実際に自分の手で薬品を混ぜたりして化学の基礎を学んだりする「座学ではなく実際に手を使った学び」が多く取り入れらている。少しレベルが上がるとパソコンで実際にロボットのコンピュータをプログラミングして、一定の指示を与えると自動でプログラミングした動きをするようなロボットの組み立て等も行う。

4.STEM教育におけるビジネスチャンス

こうしたSTEM教育への関心の高まりから、多くの教育用品・教材の開発企業がベトナムの教育市場に注力し始めている。主にこれらの企業が売り出すのはSTEM教育をより効果的にするような学習用具や教材、カリキュラムの設計、さらには学校にて教員に代わって実際に生徒たちに授業を行うサービスを提供する企業もある。すでに日本内外を含めた多くの外資企業もベトナムの教育分野への進出を実施、または検討している段階にある。

教育は当然のことながら国の重要な政策にかかわる分野であるため、ベトナム当局による規制も強い。そのため進出を考える企業は、実際にサービスを展開する時期から逆算をして、早めに市場調査、事業計画の立案、当局への投資許可の申請を順序立てて行っていく必要があるだろう。

MAIL MAGAZINE

ベトナムビジネスの最新動向と
特集レポートを配信しています。

メールマガジン登録 arrow_forward_ios

OUR BRIEF

資料「3分でわかるベトナム経済」を
無料でダウンロードいただけます。

PDF資料ダウンロード file_download

CONTACT US

ご興味をお持ちいただけましたら、
ぜひお気軽にご相談ください。

お問い合わせ arrow_forward_ios
タイトルとURLをコピーしました