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ベトナムの家電製品市場:ベトナム市場参入の成功要因

ベトナムの家電市場は、経済発展による中間層の増加とテクノロジーに精通した若い人口に支えられてきた。 ハノイやホーチミンなどの主要都市では、平均して個人は少なくとも1台の携帯電話と1台のパソコンを所有している。 2014年から2018年にかけて、家電製品の小売売上高は年間13.8%増加した。また、 国民の所得の持続的な増加は、今後の家電製品の需要の着実な成長を支えると予想される。

主要な購入チャネル:家電専門店

家電専門店は、幅広いブランドと製品カテゴリを取り揃えており、頻繁な割引キャンペーン、技術サポートなどのアフターサービスを提供している。そのため、家電専門店は消費者が最も利用する購入チャネルとなっており、家電製品の小売売上高の70%以上を家電専門店が占め、家電市場における主要な流通チャネルとなっている。

また、広範なネットワークを持つ家電専門の小売業者は、外国ブランドの優先販売のパートナーである。ベトナム家電専門小売業の中ではDien May Xanh、Synnex FPT、Nguyen Kim等の主要なプレーヤーが市場の80%を占めている状態である。

近年では大規模な家電専門店は、実店舗だけではなく、EC販売にも注力していて、自社のECサイトからの注文がEC販売の売上高の大半を占める。FacebookなどのSNSでの小売業者のマーケティング投稿の殆どは、顧客をオンライン注文サイトにリンクするものだ。

認定済みの専門小売店のオンライン注文サイトは、その他ECサイトやSNS等の他のチャネルと比較して、製品の品質及びアフターサービスに信頼性が高いと評価されている。LazadaやShopeeなどのECサイトでは、正規販売店でないものもあるため、消費者は売り手に対してより慎重な態度になっている。

流通の主要プレーヤー

AppleやSamsungのような大手電子機器メーカーはベトナムの流通業者と提携し、ベトナム全国に製品を販売している。現在、ベトナムのSynnex FPT(旧FPT Trading)とDigiworldは、家電製品流通における大手2社である。 これらの流通・販売業者は、自社の販売店舗だけでなく、Mobile World Group、Nguyen Kim、Thien Hoaなどの他の主要な小売業者の店舗を通じて輸入製品を販売している。

ベトナムにおける家電製品の購入チャネルのシェア

市場参入の形態

ベトナムに生産工場を持つサムスンやLGなどの多国籍大手メーカーとは異なり、他の大~中規模の外国ブランドは通常、ベトナムで製品を輸入及び流通させるために自社の子会社を設立する。この戦略により、企業はブランド名をより適切に管理し、カスタマーサポートのサービスが提供できる。

一方で、ベトナムで代表される流通業者と協力すると、運営とマーケティングのための初期投資コストを削減できる。しかし、ベトナム現地の流通・販売業者に販売を依頼することを意思決定した外国の会社にとって、クレジットが高く、経験豊富な流通・販売業者を見つけることは大きな課題である。現在、大半の外国家電製品メーカーはSynnex FPT や Digiworldなどのベトナムでも評判の高い流通・販売業者と協力している。

ベトナム市場へ新規参入を行う外国企業は、有限会社または株式会社の形でベトナムに子会社を設立することができる。有限会社は、最も一般的な設立形態であり、設立が迅速であり、親会社による厳密な管理が可能である。例えば、Oppo、Asus、HP、Xiaomi、Samsungが挙げられる。子会社は親会社ベトナムの法定代理人であり、ベトナムのブランドの所有者になる。そして、これらは製品の輸入及び小売業者や第三者のECサイト等との取引に関する責任を持つ。しかし、Lazada, Shopee やTikiなどのECサイトで製品を販売するには、親会社から提供された輸入書類・製品情報及び子会社の代表者の証明書が必要となる。

EC販売の拡大と普及

近年、家電専門販売でもEC利用率が高まっている。家電製品の小売におけるECのシェアは、2014年の18%から2018年には22%まで増加した。オンラインで購入する場合、消費者は人気のあるブランドや評判の高い小売業者を選ぶ傾向がある。ある調査によれば、オンラインで販売される一部の製品は、大規模なECサイトでの購入にもかかわらず、品質が悪いという。これは、これらのECサイトには多数の販売者が出店しており、ECサイトの運営者によって完全にチェックされていないためである。

EC販売は都市部での利用率が高い一方で、地方の消費者は実店舗での買い物に慣れており、店員が適切な製品の選択をサポートすることが多い。 一般に、日用品などの低価格帯の製品ほど、消費者はオンラインで購入する可能性が高くなる。特に新製品は、初めに実店舗ではなく、ECサイトでディスカウント販売することが多い。

また、家電製品サプライヤーは、ベトナムの家電製品のオンラインとオフラインの小売価格には僅かな違いがあることに注意する必要がある。通常、オンライン価格はオフライン価格より5〜10%低くなる。これは、The Gioi Di Dongに代表される多くの家電製品の流通・小売業者が、オンライン注文専用の割引を提供しているためだ。

オンライン及びオフラインでのマーケティング手法の違い

ベトナムでのSNS普及率は80%超であるため、SNSやメディアでのマーケティングは効果的である。ベトナムでは、Facebookは4,300万人以上のユーザーがおり、最も人気のあるSNSであるため、主要なブランド名がFacebookマーケティングに重点を置いている。例えば、Asus、Oppo、Samsung、LGはFacebookのマーケティングに積極的に取り組んでおり、ミニゲームやプロモーションなど、月に70件以上の投稿を行っている。

しかし、オフラインマーケティングは、新規市場の参入者にとって重要な役割を果たす。店舗に販売販促スタッフを配置するなど、伝統的な販売販促チャネルの広告により、潜在的な顧客のブランド認知度を高める効果があると考えられる。特に、販売促進の店員は店舗で製品のリーフレットやカタログを配布し、消費者と対話するなど、良い印象を与えることができる。また、店舗で製品を体験してもらうことも効果的なアプローチの1つだ。

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