図解で分かるベトナム経済:中国からベトナムへの製造拠点の移管 ~なぜベトナムなのか~

日系企業を含めた多くのグローバル企業が生産拠点を中国から第3国へ移転する動きを強めていることは以前の記事でも繰り返し述べてきたが、この記事では移転先としてなぜベトナムが選ばれているのか、中国やタイ、インドネシア、フィリピンといったASEAN諸国の投資環境や成長ポテンシャルの切り口から比較分析を行うと同時に、図解で分かりやすく深堀りして行きたいと思う。

世界中のグローバル企業が中国からベトナムへ移管

中国から第3国への移転の動きの背景には、米中の貿易摩擦がある。アメリカによる関税引き上げを回避するため、中国からベトナムやタイなどに生産拠点を移転する動きは以前からあった。代表的な事例としては、任天堂やアシックス、京セラといった日本の大手メーカーのほか、アップルやパソコン大手のエイスースが中国からベトナムへの生産拠点移転の動きを発表している。

今回の新型コロナウイルス発生に伴い、中国依存のリスクを改めて思い出される結果となった。主要国のなかでも特に対中依存度が高い日本のメーカーは、多くの企業が中国からの必要な部品を調達できなくなるといった事態に見舞われることになった。

中国からベトナムへの移管といったトレンドは今後ますます拡大していくものと考えられる

日本企業はなぜベトナムを「有望」と考えているのか?

日本企業がなぜベトナム市場を有望と考えるのか、その理由について探っていきたい。日本貿易振興機構(JETRO)が毎年海外ビジネスに関心の高い日本企業に対して行っている「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」によれば、事業拡大先として中国を検討する企業が減少する一方で、ベトナムを検討する企業が増加を続けていることが分かる。

中国は日本企業が事業拡大を検討する国として依然としてトップの位置を守り続けているものの、2011年以降、その企業の割合は減少が続いており、2011年の67.8%から、2019年には48.1%まで大幅に後退した。一方で、ベトナムは2019年の調査結果で初めて40%を超え、中国との差は2018年の19.9%からわずか7.1%にまで縮小した。

また、日本政策金融公庫が海外現地法人を持つ中小企業に実施したアンケート調査結果では、今後3年間の事業展開での有望国」として、ベトナムが6年連続でトップになった。有望な主な理由としては、「労働力が豊富」(61%)、「現地市場の将来性が高い」(43.7%)、「優秀な人材の確保が可能」(31%)が挙げられている。

次に、国際協力銀行が実施する「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」によると、ベトナムを有望として考える理由は「現地マーケットの今後の成長性」(70.1%)、「安価な労働力」(52.1%)、「優秀な人材」(25.0%)として挙げられている。

傾向として、以前は「安価な労働力」をベトナム市場の魅力として挙げる企業が多かったが、ベトナムでは近年、賃金の上昇が見られ、安価な労働力を魅力として考える企業は割合としては低くなっている。事実、ベトナムでの事業展開の課題としても「労働コストの上昇」(34.6%)は最も多くの企業が課題として認識している。

ベトナム市場の魅力は「安価な労働力」から「現地市場の将来性」へ

以上のような日本企業へのアンケート調査から、近年の大きな傾向として、ますます多くの企業が中国よりも、ベトナムやタイなどのASEAN諸国への進出や事業拡大が有望であると考えていることが読み取れ、有望と考える理由としても、ベトナム市場の成長性を評価する声が高まっていることがわかる。

ベトナムは現在1億人の人口規模で、安定的に経済成長が続いており、中間層も年々増加している。今後、消費市場として成長する高いポテンシャルがあると見て間違いないだろう。

ここからは、中国からの製造拠点の移管先がなぜベトナムであるのかについて詳しく見ていきたい。分析の視点としては、①長期的な経済成長のポテンシャル、②ベトナム人材の量と質、③中間層の拡大(消費市場としての成長性)の3点であると私は考えている。

2050年にかけてベトナムは最も高成長を遂げる国に

まずは長期的な経済ポテンシャルであるが、ベトナムは2050年にかけて世界で最も高い経済成長を遂げる国となるという調査結果がある。大手コンサルティング会社PwCのレポート「2050年の世界」によれば、ベトナムはナイジェリアと並んで、2050年までの期間において、年平均実質GDP成長率が最も高いとされている。

上位国にはアジア各国が多く、インド(4位)、フィリピン(5位)、インドネシア(6位)、マレーシア(10位)、タイ(13位)、中国(14位)等、ベトナムの近隣諸国が多くランクインしているが、ベトナムはこれらの国を上回る経済成長率を遂げると予測されている。

このレポートでは、予測GDPの世界順位(PPOベース)では、ベトナムは世界順位を大きく上げることも予測されている。2016年時点でベトナムは32位であったが、2030年には29位、2050年には20位まで順位を上げる予測だ。ちなみに、2050年の上位3か国は中国(1位)、インド(2位)、米国(3位)で、日本は8位まで後退する。

今回の新型コロナウイルス発生のような発生の予測が困難な事象は今後も続くであろうし、長期的な世界経済の予測には不確実性が伴うことは確かである。しかし、長期的なトレンドとして、世界の経済力は先進国からアジアやその他地域の新興国にシフトしていくことはほぼ確実であろう。

ブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコ、ロシア、トルコの世界GDPにおけるシェアは2050年までに約50%まで上昇する一方で、先進7カ国(G7)のシェアは20%強にまで低下する可能性もこのレポートでは指摘されている。また、2050年までに主要経済大国7カ国のうち6カ国は新興国が占める見込みだ。(アメリカのみ上位7か国に残る)

また、2020年は新型コロナウイルスの影響を世界各国が受け、マイナス成長に転じる国が多く存在するなか、世界銀行のレポート「Global Economic Prospects」によれば、ベトナムは2020年でも+2.8%のプラス成長を維持すると見込まれている。中国は1.0%に成長にとどまり、タイ(-5.0%)、インドネシア(0%)、マレーシア(-3.1%)、フィリピン(-1.9%)とマイナス成長または低成長が目立つ中で、ベトナムのプラス成長は着目に値する。

次回の記事では、引き続き、「ベトナム人材の量と質」、「中間層の拡大(消費市場としての成長性)」の視点から、なぜベトナムなのかについて深く分析していきたい。

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