ベトナム小売市場のメガトレンド:EC市場と電子決済の普及

前回のレポートではマクロ的な視点から、ベトナム小売市場について分析を行い、中間層の拡大とそれに基づく消費者嗜好の変化、及びモダントレードの発展、EC市場の勃興が今後のベトナム小売市場を見る上での重要な切り口であると述べた。今回のレポートでは、EC市場と電子決済を焦点を中心に小売市場の長期的なトレンドについて深堀して考察を続けていきたい。

ベトナム消費者が好む購入チャネルとモダントレードの発展

大手コンサルティング会社のデロイトが2019年にベトナム国内の主要都市にて1,000人を対象に行った消費者動向のアンケート調査のレポートによれば、ベトナム消費者が好む購入チャネルが商品ごとに大きく結果が異なっている。オーディオ・ビデオ機器、家電、携帯電話等といった電子機器については、9割近くがモダントレードを通じた購入が好まれる一方で、飲食料品、嗜好品、生活用品はモダントレードの割合が比較的小さく、トラディショナルトレードのシェアが依然として高い。これらはローカルブランドが強い商品群ではあるものの、今後モダントレードの発展の余地がある商品であると考えられる。

また、都市ごとにも購入チャネルの嗜好は異なっており、スーパーマーケットを好む傾向は全国的に強いが、ハノイ市やダナン市ではパパママショップを好む傾向が強く、それぞれ、38%、45%となっている。また、伝統的な生鮮市場もカントー市で41%と多く好まれるほか、ダナン市で19%、ホーチミン市で18%と好まれる傾向が強い。今後はスーパーマーケットを含め百貨店やショッピングモールといったモダントレードが発展していくことに加え、ECサイトの普及により、購入チャネルはますます多様化していくだろう。

上位中間層や富裕層が集中する40代以上のオンライン購入率は低い

ベトナム商工省傘下の電子商取引デジタル経済局(iDEA)、ベトナム商取引協会(VECOM)によれば、ベトナムのEC市場規模は、2015年に約40.7億USD、2018年に約80.6億USDと市場規模が拡大しており、2019年および2020年の成長率が30%で推移した場合、2020年中に市場規模は130億USDに達すると発表している。

また、2025年におけるベトナムのEC市場規模は244億USDと、東南アジアで最も急速な成長率を示しており、その規模はインドネシアに次いで2番目となる見通しだ。2018年時点で、EC販売は小売業売上高の4.2%とまだそれほど高い数字ではないが、今後の成長が期待される。

また、ベトナムのインターネット人口であるが、世界のインターネット利用者数を公開しているInternet World Statsの報告によると、68,541,344人(2019年6月末)で、これは総人口の70.3%にあたる。

iDEA(電子商取引デジタル経済局)が発表した統計資料において18歳未満(2%)、18歳以上~25歳未満(46%)、26歳以上~35歳未満(38%)、36歳以上~45歳未満(12%)、45歳以上(2%)のベトナム人消費者に対してEC関連の様々なインタビューが行われており、ベトナム人のインターネット使用頻度や習慣、ECへの興味などが調査された。この調査によれば、ベトナム国民のインターネット使用の目的(複数回答可)の割合で、ECサイト閲覧は61%に及んでおり、SNSの62%に次ぐ割合の高さとなった。また、インターネット上での購入チャネルにおいても、ECサイトはSNSやアプリと比べても割合が高く、2018年は2017年と比較して6%程度上昇した。スマートフォンの普及率は年々高まっており、2023年には45%までに普及拡大する見通しである。

インターネットの普及率の工場に伴い、ベトナムのeコマース市場は成長が続いている。ある調査会社の調査によれば、ベトナム国民のうち、36%が少なくとも過去1年以内に1回はオンラインショッピングを経験したことがわかった。一方で、年代別に見ると、その回答のシェアは異なっており、若いほどオンラインショッピングの経験の割合が大きいことが分かる。所得レベルが高い上位中間層や富裕層が多いと考えられる40代以上はオンラインショッピングの経験が少ないことが分かる。

オンラインショッピングが好まれる理由としては、並ぶ必要がなく、移動する必要もないので便利である、扱う商品の種類が多いといった理由がメリットとして挙げられた一方で、返品ポリシーが明確でない、信頼の置けるECサイトが少ない(粗悪品が送られる、写真とは異なるものが送られる)、個人情報の問題、輸送中の破損といった課題も挙げられている。これらの課題は今後のベトナムのEC市場の発展において解決が必要となる主要な課題となるだろう。

また、現金決済の割合は依然として非常に高い割合である。銀行口座の所有率は僅か31%で、これは東南アジアで最も低い水準である。ベトナムでは現金ベースの経済が大半を占めており、 ベトナム全国、特に農村部では人口の大部分が、毎日の小規模の購入から家や車の購入まで、あらゆる規模の取引を現金で行うことを好んでいる。

また、オンラインショッピングでも、ベトナムの消費者は現金を使うことを好むことが分かっている。調査回答者の97%が、オンライン購入の最も好ましい支払い方法として代金引換を挙げている。この点について、ベトナムでのデジタル決済の拡大を妨げている重要な障壁についてこれまで多くが指摘されてきた。例として、ベトナムでのカード取引の約90%は、現在、ATMでの現金引き出しの目的で使用されており、クレジットカードとモバイルウォレットの所有率はそれぞれ僅か4.1%と3.5%でしかない。

電子ウォレットの急拡大の可能性

しかし、ベトナムにおけるキャッシュ決済の普及は時間の問題であると考えられる。ベトナム政府は2020年末までに現金決済の割合を10%未満とし、キャッシュレス決済をスーパーマーケットなどで100%、都市部の個人店などで50%にする政府目標を設定、推進している。近年では、実際に都市部の飲食店や小売店などでは電子ウォレットを通じた決済を宣伝する掲示を多く見かけるようになった。

モバイルバンキングの主要決済手段となるのが電子ウォレットアプリの存在である。現地経済紙のアンケートでは、MoMo、ZaloPay、ViettelPayがベトナムを代表する電子ウォレットとして、トップ3に選ばれた。このほかにもVNPAYやVinID、Grabウォレット(moca)、SamsungPayなどがサービスを展開している。

現在、業界最大手はMoMoである。KPMGが発刊した「2018 フィンテック100」にもベトナムから唯一選ばれており、1,500万程度のユーザーがいると推定される。国内の小売店やカフェ、映画館、ガソリンスタンドなど100を超えるチェーンで、会計が半額になる大規模なプロモーションをこれまで実施するなどし、新規ユーザーの取り込みを強化している。一方で、競合となるサービスもキャンペーンを打ち出しており、ショッピングだけでなく、タクシーの乗車や公共料金の支払い等もアプリ上で決済可能となりつつある。

今後の見通し:デジタル化が進むベトナム小売市場

中間層の拡大に加え、デジタル経済の発展が今後のベトナム小売市場のメガトレンドと考えて間違いないだろう。ECサイトや電子決済の普及については多くの課題が横たわっていることは紛れもない事実であるが、今後の時代の流れは間違いなく、デジタル経済の発展に向かっていく。変化の速いベトナムの経済と社会であるが、長期的なトレンドを見据え、ベトナム現地の消費者のニーズを徹底的に理解することがベトナム小売市場での成功要因となるだろう。

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