ベトナム小売市場:急成長の要因と2050年までのポテンシャル見通し

経済発展に伴い、可処分所得が増加し、都市部への人口流入が続くベトナムでは、国民の生活レベルが日々向上しており、東南アジア地域で最もダイナミックに経済発展を続けている国であると言える。特に、15歳から64歳の人口が総人口の7割を占めており、比較的若い消費者の力強い購買に支えられる小売市場は今後も成長が続くことが見込まれる。

新型コロナウイルスが感染拡大した2020年であるが、ベトナムは他国と同様に、貿易、外国企業からの直接投資が落ち込んだものの、国内の消費市場は堅調に成長を続け、GDPを見ても、プラス成長を維持した。このレポートでは、ベトナムの小売市場にマーケット情報やトレンド、ベトナム消費者のトレンドについて考察していきたい。

成長ドライバーとしての人口増と都市化

ベトナムの総人口は約1億人規模に及んでおり、その7割が15歳から64歳という比較的若い年齢層が占めている。また、国民の平均年齢も32歳程度である。今後も人口は増え続け、若い年齢層も7割程度を維持することから、幅広い商品、ブランド、商品カテゴリーへの需要が増していくことが考えられる。2040年代にはベトナム人口が日本人口を上回る見込みであり、高齢化と人口減少が続く日本とは状況が全く異なっている。

ベトナム人口が増加し続ける一方で、都市部に流入する人口の割合は年々増えている。2018年には3,900万人が都市部に居住しており、人口の41.0%が都市部に集中する結果となった。ベトナム建設省によれば、今後も都市化が進行し、2050年頃には53.8%まで都市化が進み、都市部に住む人口が農村部に住む人口を上回るとされている。

ほとんどのモダントレード企業は、ハノイやホーチミンなどの大都市やその周辺に進出し、都市部の消費者を囲い込んでから郊外に出て行く戦略を打つだろうと考えられる。

中間層の拡大と小売市場の急成長

ベトナム国民の可処分所得はこの近年急激に増え続けている。実際にベトナムの世帯所得分布をみると、中間層が拡大していることが分かる。中間所得層(世帯所得5,000~34,999US$)の割合は、2000年の約10.4%から、2018年には約47.2%にまで上昇しており、上位中間所得層(10,000~34,999US$)の割合が2000年時点では0.0%であったが、2018年には14.9%まで増加している。

イギリス市場調査会社ユーロモニターによれば、ベトナムでは2030年までに全世帯の49%が中間層となり、1世帯当たりの年間の可処分所得が5,000~1万5,000米ドル(約55万~164万円)で、2018 年と比べて+33.8%増加すると見込まれている。

また、2021~2022年頃にベトナムの一人当たりGDPが3,000ドルを上回る見込みだ。一般的に国民1人当たりのGDPが3,000ドルを超えると、国民の自動車や大型家電、家具といった耐久消費財の購入意欲が急速に高まると言われている。

以下の図表はベトナムの一人当たりGDPと小売市場の売上高の推移を示したグラフであるが、一人当たりGDPが初めて1,000ドルを上回った2008年以降は、特に小売市場の売上高が急成長している。2008年から2019年までの18年間における一人当たりGDPの年平均成長率は8.12%であるが、同期間における小売市場の売上高の年平均成長率は15.3%に及んだ。2019年時点で小売市場の売上高は約17兆円の規模に達している。

これに伴い、日系の大手小売り企業もベトナム進出が続いている。主要な進出例を挙げると、ファミリーマート、ミニストップ、イオンモール、高島屋、セブンイレブン、ユニクロ、良品計画、マツモトキヨシ等があげられる。

モダントレードの発展とポテンシャルが高いEC市場

ベトナムでは伝統的小売り業態(トラディショナルトレード:TT)が大きな割合を占めているが、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、ショッピングセンターといった近代小売り業態(モダントレード:MT)の普及が着実に進んでいる。近年では、トラディショナルトレードの成長率は年率数%程度に留まっているが、モダントレードの成長率は10%以上に到達している。

事実、ベトナムでは、スーパーマーケット、ショッピングセンターの店舗数は増加を続けている。ベトナム統計総局によれば、スーパーマーケットの店舗数は2010年時点では600店舗に留まっていたが、2019年には1000店舗以上までに増えた。同様に、ショッピングセンターも2010年時点の100店舗程度から、2019年には240店舗まで店舗数が増大している。

ベトナム商工省傘下の電子商取引デジタル経済局(iDEA)、ベトナム商取引協会(VECOM)によれば、ベトナムのEC市場規模は、2015年に約40.7億USD、2018年に約80.6億USDと市場規模が拡大しており、2019年および2020年の成長率が30%で推移した場合、2020年中に市場規模は130億USDに達すると発表している。

また、2025年におけるベトナムのEC市場規模は244億USDと、東南アジアで最も急速な成長率を示しており、その規模はインドネシアに次いで2番目となる見通しだ。2018年時点で、EC販売は小売業売上高の4.2%とまだそれほど高い数字ではないが、今後の成長が期待される。

また、ベトナムのインターネット人口であるが、世界のインターネット利用者数を公開しているInternet World Statsの報告によると、68,541,344人(2019年6月末)で、これは総人口の70.3%にあたる。

今後の見通し

以上、ベトナム小売市場をマクロ的な視点から分析を続けてきたが、中長期的には現在ベトナムの人口の25%を占める中所得者の購買意欲が増すことから、彼らのニーズに合った商品を提供できるか否かがポイントになるだろう。モダンリテール、つまりショッピングセンター、スーパーマーケットやハイパーマーケットは今後のベトナム小売セクターの成長の要になると考えられるだろう。モダンリテールチャネルの売上はまだ全体の20%と推測されていることから、今後も成長が見込まれる。また、EC市場のポテンシャルは依然として高く、日本企業にとってもECサイトを通じたベトナム市場への進出は有望なオプションの1つとなるだろう。

次回のレポートでは、引き続き、ベトナム小売市場の分析を続け、ミクロな視点からベトナム消費者に焦点を当てて分析を続けていきたい。

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