ベトナムにおけるスマートシティ市場の拡大と日本企業参入の可能性

ベトナムにおけるスマートシティ化へのニーズの高まり

ベトナムでは急速に都市化が進行しており、首都ハノイ市や最大商業都市のホーチミン市では、交通渋滞、環境問題などの様々な社会問題が発生している。こうした社会問題に対して、AIやIoT等の先端技術を活用し、都市住民の生活の質の向上や新たなビジネスの機会を創出しようとする「スマートシティ建設」の動きが近年の大きなトレンドとなっている。スマート化のニーズは交通や環境以外にも、医療や教育、観光、情報セキュリティ、農業、食品衛生、工業団地開発、行政サービス等あらゆる分野で広がりをみせており、多くの産業が「スマート化」によって新たな投資の機会が生まれてくるだろう。

ベトナムのスマートシティ市場の概要

ベトナムにおけるスマートシティの市場規模について、ベトナム政府からは正式な公表はないが、ONE-VALUEが独自に、投資金額が公にされている全てのスマートシティの投資案件について調査したところ、合計で少なくとも1兆円近い市場規模であると見積っている。これは投資金額が公表されている案件のみをカウントしており、実際はこの規模よりも大きいだろう。

現在、ベトナムのスマートシティを積極的に推進している主体はベトナム各省・市の人民委員会である。2019年までに、ベトナム全国で30以上の都市がスマートシティに関する方針を掲げ、各都市がぞれぞれスマートシティ建設のマスタープランを策定している。国家レベルでは、主に情報通信省、建設省、科学技術省がスマートシティ開発に関与しているが、国家レベルで推進しているというよりはむしろ、各都市が自身の都市開発の中にスマートシティ建設を位置づけ、それぞれが予算をつけて独自に開発を進めているのが現況である。

一方で、ベトナムの中央政府も2015年以降は特に、スマートシティ建設を重視しており、2015年を境に急速にスマートシティに関する方針やガイドライン、法規定の整備が進められてきたが、今後数年以内に、国家レベルのスマートシティ建設のマスタープランが策定される見込みである。

スマートシティ建設を積極的に進めるホーチミン市、ダナン市

スマートシティ建設を特に進める省として、本レポートではホーチミン市とダナン市の動きを見ていきたい。

まず、ホーチミン市人民委員会は2017年11月に「2017~2020年のホーチミン市スマートシティ建設計画2025」を策定し、スマートシティ建設を優先する分野として、公共サービスの改善、政策意思決定への応用、行政の透明性確保、情報アクセスの向上、環境保全、災害対策、交通インフラの向上を掲げている。2019年2月には、交通渋滞および交通事故を減らすことを目的として、「新スマート交通管制センター」が稼働し始めた。これと同時に、市内には交通モニタリングカメラや車両数カウントカメラが数百台導入され、交通量に応じた信号切り替えのコントロール、事故発生時の警察への通報を行い、交通の効率化を進めている。

次に、ダナン市は2012年という早い段階からアメリカのIBMと連携し、スマートシティ建設のための調査を進めてきた。現在、ダナン市はベトナム最大手IT企業であるFPTとMOUを締結し、交通や環境、ヘルスケア等の様々な分野でのインフラやソフトウェアへの積極的な投資が予定されている。2兆ドン(約100億円)の資本投下が実施される見込みである、このうち、30%はダナン市の予算が適用される。

スマートシティ投資を加速させる民間企業

ベトナム企業の主要プレーヤーとしては、ベトナム国内の大手通信企業トップ3である、VNPT(ベトナム郵便通信グループ)、Viettel、Mobiphoneがあげられる。この3社はベトナム全国の省や都市に対して、スマートシティ建設やITインフラ構築のためのコンサルティングやソリューション提供を実施しており、各省・都市のスマートシティ開発計画の策定に大きく関与している。例えば、Viettelはフエ市におけるスマートシティ建設案件(予算15億円程度)の策定に関与したと報道されている。

次に、ベトナム現地のIT企業であるが、上記でも述べた最大手IT企業であるFPTは、ダナン市との協力のほかに、自社のAIやビッグデータ分析に関する知見を活かした事業を展開している。例えば、配車運営アプリ大手のグラブタクシーと戦略的事業提携を2019年3月に締結し、リアルタイム交通監視システムの開発を通じた交通事故の削減や物流の効率化を目指している。

その他、ONE-VALUEによる独自のヒアリング調査によれば、大手民間銀行A社は自社の数千万人の顧客データを活用したいと考えており、デジタルバンキング等の事業展開を検討している。また、ベトナム大手ディベロッパーB社によれば、自社が開発した工業団地への企業誘致とともに、AIやIoTといった技術に関しては大きな関心を寄せており、この分野では日系企業の知見が必要であり、積極的に日系企業とも協力を図りたいと回答があった。最後に、不動産開発を中心とした大手コングロマリット企業C社によれば、すでに日本の不動産開発企業からの引き合いを受けているが、AIやIoTといった高い技術を持つ企業との協力であれば歓迎していると回答が得られた。

次に、日本企業や外資企業の動きであるが、日本企業の大きなスマートシティ建設案件としては住友商事が大手不動産グループであるBRGグループと共に、ハノイ市におけるスマートシティ建設を進め、投資総額は約4,740億円規模に及んでいる。この案件では、2019年末までに700戸のマンションや商業施設を整備するとともに、自動運転バスやITを活用した省エネルギー機器を備えた街の開発が進められている。同じく日系商社である三井物産は大手コングロマリット企業のT&Tグループとともに、約1300憶円に及ぶスマートシティ建設案件を進め、再生可能エネルギーを活用した商業施設や住宅地の開発、渋滞解消を目的としたデジタル技術の導入が実施される見込みである。

また、NTT東日本はビンズオン省の公営ディベロッパーであるベカメックスIDCと2018年3月にMOUを締結しており、ビンズオン省のスマートシティ建設、具体的には工業団地における法人向けクラウドWifiサービス、光回線設備の構築サービスが展開される予定である。

その他、外資系企業の動きとしてはまず韓国大手のロッテグループがあげられる。同社はホーチミン市にて投資金額9億円程度に及ぶスマートシティの建設を進め、商業施設のほか、オフィスやサービスアパートを備えた5万平方メートル規模のスマートシティを開発する計画である。また、シンガポール大手ケッペルランドもホーチミン市内にて500億円以上を投資し、住宅地開発を行っており、スマートセキュリティ管理やスマート交通、環境インフラといった最新技術の導入を予定している。

結論

このように、ベトナムにおいてはスマートシティ建設のニーズが高まるとともに、今後スマート化の動きは全国各地、全産業に拡大していることが考えられる。様々な分野で高い技術を持つ日本企業にとっては、スマートシティ建設への参入の余地も非常に大きいと期待される。AIやIoT等のIT技術の進展により、今後もスマートシティの動きが加速していくと推測される。

※ONE-VALUEはベトナム政府やベトナム企業、各種業界団体とスマートシティ建設に関する情報収集を現在も実施しています。ベトナムのスマートシティ建設にご関心があれば、是非以下の連絡先までお気軽にご連絡ください。

contact@onevalue.jp

参考資料

スマートシティ建設に関する法整備の動向

スマートシティ建設を推進する各都市の動き

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