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ベトナムのドラッグストア市場:小規模個人薬局からドラッグストアチェーンへ

経済成長が続くベトナム経済であるが、中間層の拡大、健康意識の高まりから、ドラッグストアチェーン市場の成長が続いている。小売業態として、小規模個人薬局が市場シェアの多くを占めていたが、近年になりドラッグストアチェーンが店舗拡大を続けており、市場シェアを獲得している。所得水準の高まりからベトナム消費者は以前にも増して医薬品、健康食品に対する品質、安全性を求めるようになっており、偽物を購入してしまうリスクを避けるため、信頼の置けるドラッグストアチェーンで購入する傾向が強まっているためだ。

最大手ドラッグストアチェーン、ファーマシティが市場成長をけん引

ベトナムの大手ドラッグストアチェーンと言えば、ファーマシティ(Pharmacity)、メディケア(Medicare)、FPTリテール傘下のロンチャウ(Long Chau)の3社があげられる。最大手のファーマシティは2020年になり、新たに225店舗をオープンし、現在までに480店舗をオープンしている。ファーマシティは2021年末までに1,000店舗まで店舗数を拡大する計画だ。

一方で、大手3社とも売上高は拡大する一方で、最終利益は赤字に陥っており、最大手のファーマシティに至っては、2020年1~6月期における税引き後利益は1,980億円(約8億9千万円)の赤字となった。急速な店舗拡大が赤字拡大を招いている。一方、ファーマシティの粗利益率は24~25%と、小売業界においては比較的高い水準であり、負債比率も30%を維持している。

ベトナム人消費者の嗜好変化:安全性、信頼性、品質

ファーマシティの創業者であるクリス・ブランク氏はアメリカ出身で、貧しい少年時代を過ごし、両親を交通事故で失い、1998年からベトナムに移住した。クリス氏はベトナムの金融業界で事業の成功を収め、2011年にファーマシティを創業し、現在では2,000人を超える従業員、500店舗数まで成長させた。現時点でもベトナム国内には、57,000以上の小規模個人薬局があるが、クリス氏によれば、「ドラッグストアチェーンが単なる薬以上のものと価値を提供しているという世界的なトレンドを常に意識している」と述べている。確かに、ファーマシティはベトナム市場における信頼、ブランド力に下支えされ、ベトナム人消費者の関心を集めており、競争力を維持していると言える。

ドラッグストアチェーンは医薬品、健康食品の販売にとどまらない

ドラッグストアチェーンの役割や価値が変容しているという現象は日本市場でも見られることだ。日本チェーンドラッグストア協会によると、日本国内のドラッグストアの市場規模は7兆円にまで発展しており、スーパーマーケットの12兆円にはまだ届かないが、百貨店の6兆円弱を、既に上回っている。ドラッグストアはマクロ経済の低成長、デフレ、少子高齢化が続く日本で、数少ない成長分野の1つでもある。近年になり、もはや医薬品等の販売にとどまらず、トイレットペーパーといった家庭用雑貨、冷凍食品、カップ麺、カレーなどのレトルト食品、パンのような加工食品も充実しており、日常生活に必要な商品までがワンストップで揃うようになっている。

ドラッグストアチェーンは医薬品、健康食品の販売にとどまらない

日系ドラッグストアチェーンもベトナム進出

日系大手ドラッグストアチェーンのマツモトキヨシもベトナム進出を2019年に正式に公表している。ベトナム店舗では日本の化粧品、世界的な有名ブランドの化粧品のほか、健康補助食品、機能性食品、ボディケア用品の販売を計画しているという。

医薬品、健康食品メーカーにもベトナム市場参入の新たな機会

ドラッグストアチェーンの発展は医薬品、健康食品メーカーにとってもベトナム市場参入への新たな機会を与えることになるだろう。中間層の拡大により、今後ますますベトナム人消費者による医薬品、健康食品への支出額が増加していくことは間違いない。高品質、安全性、ブランドで競争力を持つ日本の医薬品、健康食品が、ベトナム人消費者の嗜好をいかに捉えて販売戦略を立てるかが進出成功のカギとなるだろう。

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