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ベトナム木材製品産業のポテンシャル:ベトナムブランドの確立を目指して

木製品・木製品の輸出は、ベトナムの輸出経済における主要なセクターの1つである。同セクターの輸出額は2019年では100億USドルとなっており、その中で日本は第2位のベトナム木材・木製品の輸入国である。2020年にはコロナウイルス感染拡大の影響によりベトナムの輸出入は低調であったが、同セクターの輸出額は引き続き右肩の成長を達成した。
ベトナムは東南アジアの中で最大の木製家具の製造・加工工場と見なされており、アジア全体でも輸出量は第2位、世界でも第5位となっている。

1.OEM生産からODM生産へ

ベトナム政府は、同セクターを2025年までにOEM生産からODM生産へと移行したいと考えている。OEM生産とは「Original Equipment Manufacturing」の略語であり、委託者のブランドで製造する生産方式、あるいは生産する製造メーカを指す。OEMは委託者の技術水準が高く垂直的分業となる事が多い生産方式である。一方ODMとは「Original Design Manufacturing」の略語であり、製品の製品開発から設計、製造までを行い、委託者が製品を販売するという生産方式である。ODMでは受託者の技術水準が委託者と同等あるいはそれ以上にあることが条件とされている。
ベトナムは今後、国内の生産技術水準を高め、自国のブランドにおいて製品を輸出したいという意向を持っている。これは木製製品に限らず電子機器、食品等の全ての製造セクターにおいてベトナムが目指している方向である。

2.世界で注目され始めたベトナム木材製品

Scansia Pacific Co. LtdのNguyen Chien Thang会長によると、近年ベトナムの木材産業は技術、機械性能、管理プロセスの向上により大きく成長したと捉えている。ベトナム製品は高品質であるだけでなく、価格も手ごろであるため、国際市場においてベトナムの木製製品は十分な競争力があると述べた。
ベトナムは現在単なるOEM製造によるアウトソーシングだけでなく、世界的に知名度の高い家具製造企業へ直接製品を納入している。それらの製品はマンションやパークハイアットセントクリストファーネイビス(カリブ海島)、6つ星ホテルローズウッドプノンペン(カンボジア)などの主要プロジェクトにも供給されており、また多くの高級ホテルチェーンやリゾート運営会社はベトナム製の高級家具への注目度を高めている。 ベトナム木材・木製品協会(HAWA)によると、木材産業は、植林、伐採、加工、輸出、建設、内外装飾を含めた上流から下流までの生産チェーンを長きに渡って構築してきた。また製造業全体について述べれば、縫製業、皮革産業、金属製造業、製造用機械業等の業界でも国内で生産を全て賄うことのできる生産チェーンが出来上がっている。またベトナム製の品質を保証するために、ベトナムはFSC認証制度を積極的に活用している。現在は東南アジアでベトナムは最もFSC認証を発行されている国となっている。

3.木材製造業を発展させるための政府の取り組み

OEM生産からODM生産への移行という目標を実現するために、ベトナム政府は同産業の発展のために下記のような政策を実施していくと発表した。
 木材加工用の安定した原材料の供給のため、大規模な植林プロジェクトをこれまで以上に促進していく。
 ベトナムへの木材輸出国が輸入業者の困難や問題を取り除くための植物検疫証明書を持っている場合は、輸入丸太材と製材の植物検疫免除の規定改正を検討する
 木材産業における人材育成プログラムを促進していく
 国内企業にベトナムが他国と締結した協定の詳細規定・メリット等の普及を促進していく

今後、特にCOVID 19の流行後、世界の木材および木材製品業界の企業も、中国市場での生産への依存を減らすための動きを取ることが予想される。 ベトナムは多くの国にとって最も魅力的な製造先の1つであり、木材製品のODM生産には多くの利点がある。

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