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日本のバイオマス発電を支えるベトナム産木質ペレット(後編):持続可能なビジネスモデル構築への期待(環境配慮、貧困削減、エネルギー需要への対応)

他国より安価なベトナム木質ペレット

ベトナム産木質ペレットは日本の主要な木質ペレット輸入相手国であるカナダ、中国、タイ、マレーシア産の木質ペレットと比較しても価格競争力の面でも見劣りしていない。2019年におけるベトナム木質ペレットの1トン当たり輸入額は18,246円である一方で、中国(55,890円)、カナダ(20,554円)、マレーシア(17,648円)、タイ(17,568円)となっている。日本国産の木質ペレットの価格はベトナムを始めとする輸入品と比較して2~3倍とされており、バイオマス発電のコストの約7割を占めるのが燃料コストであることを考えれば、安価な海外産木質ペレットを使用する動機は大きい。

世界有数の森林資源国ベトナム

ベトナム国内には世界と比較しても多くの森林資源が存在している。ベトナムの国土面積は約3,300万haであるが、そのうち、森林面積は約1,400万haに及んでいる(森林率:約41%)。森林全体のうち、天然林が約7割、人工林が約3割を占めているが、2014年の首相決定により、天然林の伐採が禁止された。

森林総局の統計によれば、ベトナムの人工林を樹種別にみると、7割近くがアカシアが占めており、その他にはユーカリやゴムといった樹種が人工林における大きなシェアを占めている。

2018年3月時点の森林総局の統計によれば、ベトナム国内における人工林の所有者別の森林面積とその割合を見ると、ベトナム国内の人工林の総面積4,178,966ヘクタールのうち、「個人・世帯」は1,532,199ヘクタール(全体比36.7%)を占めており、最も大きなシェアを占めている。次いで、「村の人民委員会」も全体比で28.2%に及んでおり、このようなセグメントへのアプローチは木質ペレット製造の原料確保に大きく関わってくるであろう。

ベトナムの森林認証スキーム

日本の林野庁によれば、2018年現在、ベトナム国内には、FSC森林認証が31件あり、総面積は233,824ヘクタールに及んでいるとされており、そのうち約12万haが人工林であるという。また、政府・業界団体では、国内の森林認証(PEFCとの相互認証)の設立の検討が進められているとの情報もある。

2018年にベトナムは輸出量で世界第3位の木質ペレット輸出国に

ベトナムの木質ペレット輸出市場は2013年に韓国向けを発端として始まった。2014年の輸出量は2013年と比較して4.6倍となる60万トン超を記録したが、韓国国内でのバイオマス発電開発の延期等を受けて、2015年の木質ペレット輸出は55万トンに落ちこんだ。

しかし、2015年以降における日本向け輸出が急拡大するとともに、韓国向け輸出も増加したことから、ベトナム全体の木質ペレット輸出量も増加した。

2015年時点で木質ペレット世界市場におけるベトナムのシェアは3.5%に過ぎなかったが、2018年には世界シェア8.5%にまで拡大し、ラトビア(7.1%)、ロシア(6.4%)を追い抜くとともに、アメリカ(25.4%)、カナダ(11.2%)に次ぐ世界第3位の木質ペレット輸出国にまで成長した。

今後は未利用木材の活用が期待

今後はベトナム国内でもバイオマス発電の開発が進んでいくものとみられ、ベトナム国内でも木質ペレット需要は高まる可能性が考えられる。従来の森林資源に加え、これまでは有効活用されていなかった未利用木材である間伐材や林地残材、木材加工工場で発生する廃材やおがくず、建設廃材(建物取り壊し時に発生する廃材)、ゴム木廃材(※ベトナムは世界トップレベルの天然ゴム生産国であり、天然ゴムの採取が終わったゴム木を伐採して有効活用する動きがある)といった木材を活用した木質バイオマス燃料の製造が期待される。未利用木材を活用した燃料の製造により、農民の所得向上や環境改善だけでなく、ベトナム国内で急増するエネルギー需要へ対応できるようなビジネスモデルの構築、持続可能な木質ペレット製造が今後ますます注目されるだろう。

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