2021年10月06日 作成
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加速するベトナムのFinTech市場:市場の特徴とポテンシャル(前編)
金融ITの融合、すなわちフィンテックが東南アジアで盛り上がりを見せている。東南アジア諸国ではこれまで筆者のレポートでも取り上げてきたベトナムと同様、金融セクターの健全化のために克服すべき解決すべき課題が少なくない。そのため当該地域で開発が進むフィンテックは先進国におけるフィンテックの発展とは異なる過程、形態を取っている。前編である本レポートでは東南アジアにおけるフィンテック投資の概況および傾向を中心にまとめていく。
1.急増するベトナムのフィンテック分野への投資
東南アジアにおけるフィンテック市場はシンガポールおよびインドネシアが牽引してきたが、2018年から2019年にかけてベトナムのフィンテック投資が急増した。その背景にはVNPayが展開している電子決済サービスへの30億ドルの資金調達、およびMOMO Payの電子決済サービスへの10億ドルのシリーズCの資金調達が大きな影響を与えている。
2.未成熟な銀行セクターと電子決済サービス交流の関係
(VNPayのイメージ図:VNPay株式会社の公式HPより)
前回のレポートでもお伝えしたように、ベトナムにおける銀行口座保有率は2019年には63%に達しているものの他国と比べて依然低い状況にある。その背景には銀行口座を開くための充分な信用力を持つ中間層がまだ少ないこと、クレジットカードなどが使用できる場面が日常生活の中でまだまだ少なく、現金社会であること、また特に地方ではATMの数が少なく、利便性に欠けることが大きな要因である。一方で国民のスマートフォンの所持率は90%以上と非常に高くなっている。
そのような中で、VNPayやMOMO Payが提供するモバイルによる電子決済は、いわばスマートフォンの中に入れて持ち運ぶことができるATMのような役割を果たし、国民の間で絶大な人気を得ている。日本のように金融市場がある程度成熟した上に発展しているフィンテック市場とは異なる状況である。フィンテックの種別ごとの統計では、シンガポールでは電子決済、ネット銀行、会計クラウドサービス等はばひろい分野において投資が行われているのに対して、ベトナムでは投資額の98%が電子決済サービスへと向けられており、偏りが見られる。
3.ベトナムにおけるフィンテック市場のポテンシャル
ベトナムにおけるフィンテック市場は非常に加熱している状況であるが、その詳細を見るとVNPayおよびMOMO Payの大型資金調達が統計に大きな影響を与えている。また電子決済サービスが投資額のほとんど全てを占めており、その他のパーソナルファイナンス、ブロックチェーン、投資などの分野ではまだまだ市場の伸びしろが大きいと言うことができる。今後ますますフィンテックが国民の間で浸透していき、また中間層の増大、ベトナム金融市場の健全化が進むことで国民が現金以外での資産管理などにより興味を示すようになり、今後電子決済に限らない様々な分野におけるフィンテック市場が発展していくことが予想される。
この記事の後編はこちら⇒加速するベトナムのFinTech市場:市場の特徴とポテンシャル(後編)
ONE-VALUE株式会社ではフィンテック市場の投資ポテンシャルについて常に情報を収集している。より詳細なフィンテック市場における情報および最新の投資トレンドについて詳しく知りたい方は、弊社までお問合せをいただければ幸いである。
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