日本・ベトナム企業の納税額ランキングから見る両国の産業構造の特徴

本レポートでは、日本における法人税等の納税額上位50社、およびベトナムにおける法人税等の納税額上位50社を比較し、両国の産業構造の違いについて分析していく。

納税額が大きい日本企業上位50社

出所：「東洋経済オンライン」2020年、東洋経済新報社を基にONE-VALUE社が作成

納税額が大きいベトナム企業上位50社

出所：ベトナム税務総局の発表を基にONE-VALUE社が作成

日本・ベトナム企業の納税額上位50社の業界別の特徴

日本で上位50社の4割以上を占めるのは自動車を始めとする製造業であり、3大通信キャリア企業（NTT、KDDI、ソフトバンク）および商社がそれに続く。大手メガバンクもランクインしているものの4社にとどまっている。金融業についてはオリックスを除く3社（東京海上、第一生命、MS&AD）は保険業を事業の核としており、その他セブン&アイ・イオン・ファーストリテイリングの大手小売企業、キーエンス・リクルートのサービス業、国際石油開発帝石・JXTGの石油会社がランクインしている。

一方、ベトナムで最も多く上位50社にランクインしているのは銀行であり、現在14行の銀行がランクインしている。うちVietcomBank、VietinBank、BIDVの3行は3大国有商業銀行として知られており、ホーチミン市証券取引所に上場している（この3行はベトナム国家銀行：SBV以外の株主が存在していることからSBVのウェブサイト上では民間商業銀行として扱われているものの、SBVの持ち株比率が50%以上であるため、実質AgriBank、Global Petro Sole Bank、OCEAN Bank、Construction Bankの4行と併せた計7行が国有商業銀行として見做されることが多い）。

銀行以外に目を向けると、ランキングのトップは通信最大手のベトナム軍隊工業通信（Viettel）グループである。Viettelはベトナム国防省が所有、運営している国営企業であり、国内での通信キャリアのシェアは50%以上でトップである（シェア2位はVNPT参加のVinaphoneで24.8%、3位はMobifoneで20.6%となっている）。2位にはホンダベトナムがランクインしており、民営企業の中ではトップである。製造業企業は8社がランクインしているが、うちHOA PHAT社を除く7社は全て外資企業であり、ベトナム資本の製造業企業はベトナムの産業構造の中でまだ大きな地位を占めるには至っていない。つまりベトナム市場は外国製品への依存度が高いと言うこともでき、ベトナムの消費市場に日本企業が進出するためには好都合な条件である。

また日本のランキングと比較して特徴的な点は、飲食料品の企業が6社ランクインしている点である（日本では0社）。これはB to Bが産業構造の大部分を占める日本の産業構造とは異なり、ベトナムの産業構造においてはB to Cが産業構造の中で重要な部分を占めていると言える。また飲食料品についてもランクインしている6社のうち外資企業が4社を占めており、同じく外国製品の占有率が高い市場であると言える。日本企業ではエースコックベトナムがランクインしているが、他にも味の素やヤクルト等、多くの飲食料品の企業がベトナムに進出し現地の市場を開拓している。いずれの社の製品もベトナム人の中でも非常に認知度が高く、同社の製品はベトナム市場に広く浸透していると言える。ベトナム市場に進出する際には製造だけでなく、市場への製品の浸透率を上げる必要があり、現地のパートナーとの提携や代理店の活用等の様々な手段を、ベトナムを専門としたコンサルタントと共に検討することをお勧めしたい。

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