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ベトナム風力発電のポテンシャル:東南アジアで最もポテンシャルが高い国の1つベトナム

本記事ではベトナムの風力発電のポテンシャルについて、インド、タイ、インドネシア、台湾といったアジア近隣諸国との比較から分析していきたい

伸び悩む世界第4位の風力発電大国インド

2017年時点でインドは中国(161GW)、アメリカ(87.5GW)、ドイツ(50.5GW)に次いで、世界第4位の風力発電開発国となっている。インドでは以前より急速な経済発展に電源開発が追い付いておらず、慢性的な電力不足が続いていたが、モディ政権は再エネ開発を重視しており、2022年までに再エネ電源175GWの開発を目指す目標を立てている。このうち、風力は2022年までに60GWの開発を政策目標に立てているが、2017年時点では32GWの風力発電の電源が既に開発済みだ。

一方で、年間導入量は2011年に3,200MWのピークに達した後は、2,000MW前後で推移しており、以前のようなペースでの開発が進んでいない。送電容量の不足に加え、契約や支払いに関する問題が表面化しつつあるという。

洋上風力の開発に期待がかかる台湾

台湾政府は2025年に脱原子力発電を達成し、洋上風力を含む再生可能エネルギーの電源構成比を20%に引き上げる計画を立てている。台湾海峡(西部海岸)の風況が良好であり、台湾政府としても洋上風力の発電を積極的に推進している。2025年までに4,200MWの風力発電を開発する目標を立てており、多くの日系企業も事業に携わっている。

2019年には台湾初の洋上風力発電「フェルモサ1」が完工し、2020年中にも複数の洋上風力発電所が稼働する見通しだ。

近年では、海洋生物や鳥類、漁業などへの影響も懸念されており、自然生態系へ悪影響を与えない開発に注目が集まっている。

土地取得の問題を抱えるタイ

タイ政府も風力発電に開発に取り組んでいく方針を華夏が掲げており、2036年までに6GWの電源を目指すとしている。特に北東部、タイランド湾沿岸の風況が良好である。2017年で商業運転を開始しているものは459MWで、FIT制度も導入されている。

一方で土地の課題が指摘されており、風力発電の開発に適した土地が殆ど残っていないのが現状でもある。風力発電に適した風況のよい土地は、民間所有の土地や森林地帯のため用地が限られ、風力発電に適した風況の良い土地が得られにくい状況が続いていた。但し、昨タイ政府の森林を管轄する当局より、森林を風力発電に活用することを承認する通達が出ており、今後の案件開発が進むことも期待されている。

開発に積極的な政府方針と案件の開発遅れ:インドネシア

インドネシア政府も再生可能エネルギー開発に積極的な姿勢で、2025年までに再生可能エネルギーで国内電源供給量の23%を賄い、風力発電の電源を1,900MWにまで引き上げる計画を立てている。但し、森林被覆率等の地理的要因から登録案件はまだ多くなく、2018年には国内初の風力発電所(75MW)が完成した。

インドネシアの再生可能エネルギーでは地熱発電が着目されており、多くの日系大手の総合商社や電力不足等が事業展開を行っている。一方で、風力発電では国内全体の取り組みが遅れており、事業の採算性や天候や自然災害などのリスクを考えると大規模投資をしにくいという課題も指摘されている。

風況も良好で中南部・沿岸部を中心に投資が進むベトナム

最後にベトナムであるが、2030年までに6,000MWの風力発電の開発目標が掲げられており、東南アジア諸国の中では一番高い目標値である。風力発電のポテンシャルとしては、ベトナム商工省・世界銀行の調査では26.7GW、国連環境計画(UNEP)の2015年の調査では24GWが結果として出ている。地域的には中南部、沿岸部が有望地域とされている。

2025年までに6,000MWの開発目標であるが、ベトナム電力総公社(EVN)の統計によれば、2020年1月まで既に商業運転している9つの案件(300MW程度)に加えて、31の案件(合計1,645MW)が電力購入契約(PPA)を締結済みであるが、商業運転をしていない。更に、2025年までの電力マスタープランには60の案件(2,700MW相当)が追加済みであるとされ、PPAが未締結であるという。今年2020年後半に発表される第8次国家電力マスタープランでは風力発電の開発目標を「2025年までに6,000MW~11,000MW程度」までに引き上げるという議論も政府内にあると現地報道では報じられており、風力発電の開発に積極的な方針は維持される見通しである。また、現行の風力発電のFIT制度の期限となる2021年11月以降のFIT価格について、ONE-VALUEの調査や分析によれば、洋上風力のFIT価格(9.8USセント/kWh)は維持または引き上げされる見込みが高いと分析している。

東南アジアで最もポテンシャルが高い国の1つベトナム

こうしてみると、ベトナムは近隣諸国と比較しても、風力発電を積極的に開発している国と1つであると考えられ、タイやインドネシア、台湾よりも高い開発目標を掲げている。また、風況についても良好である。風況が良い中南部~南部はベトナムでも特に電力が不足している地域であり、環境保全に加えて、電力需要への対応も期待される。

ベトナム政府としても風力発電の開発目標の引き上げやFIT価格の維持を検討しており、今後もベトナムの風力発電は市場としてもとてもポテンシャルが高いと考えられる。

ONE-VALUEについて

ONE-VALUEは常にベトナムの風力発電市場の動向をウォッチしており、ベトナムにおける風力発電案件の買収や出資の検討を支援しております。今後もベトナムの風力発電に関する情報を提供してしきますので、最新動向や新規開発、既存案件の売買についてご関心のある方は是非、弊社までご連絡ください。

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