2021年10月06日 作成
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【コラム】ベトナムの小売業はレッドオーシャンか?
1.ベトナム市場におけるイオングループの躍進
イオングループはすでにベトナムに5つのイオンモールを展開している。
①イオンモールタンフーセラドン
②イオンモールビンズオンキャナリー
③イオンモールビンタン
④イオンモールロンビエン
⑤イオンモールハドン
また、2020年12月にはハイフォン市にて、イオンモールハイフォンレチャンが開業する見込みである。またコンビニのミニストップも確実に数を伸ばしており、街中でもよく見かけるようになった。
9月に行われた開業に向けてのレセプションでは、在ベトナム日本副大使が出席し、イオンモールが2025年までにベトナムで約20店舗を展開していく予定であり、総投資額は20億ドルとなるだろうと発表した。
2.ベトナムの小売市場はレッドオーシャン
ベトナムの小売業界で外資が地場企業の足場を切り崩して業績を伸ばすのは、簡単なことではない。小売はto Cであることから、ブランドイメージを一般へ広めることが大切だが、後発の企業が一般大衆の中で周知されるようになるには時間がかかる。
外資のベトナム小売業界への挑戦の事例としては、ドイツのMetro Cash&Carry、フランスのAuchanがある。それぞれベトナムにてショッピングモールを展開していたが、業績が上がらなかったことによりMetro Cash&Carryは2014年にタイのTCCグループへ、Auchanは2019年にベトナムのホーチミン市商業合作社(サイゴンコープ=Saigon Co.op)へとそれぞれ買収された。
しかしこのような撤退の事例があるとは言え、ベトナムは外資小売企業にとって引き続き有望な市場であることは変わらない。大きな理由は2つある。
①中間層(ローワーミドル・アッパーミドル:世帯の可処分所得が$5,000~$35,000/年の層)の拡大
②圧倒的強者(市場で圧倒的シェアを占める企業)がまだいない
ベトナムの小売業界の構造を現地調査も含めて徹底的に行い、自社の強みを活かした展開の戦略を立てることが業界を問わずベトナムの業界で成功するためのポイントである。
3.ベトナムの小売について知るべき背景(モダントレード、トラディショナルトレード)
先に挙げた2社が思うように業績が伸びなかった理由を探るためには、べトナムにおける小売業界の構造を知る必要がある。ベトナム国内では、現在スーパーが約800カ所、ショッピングセンターは約150カ所存在する一方で、伝統的市場は9000、個人商店は220万に及ぶ。スーパーやショッピングセンター等の近代的な小売業態をモダントレード(MT)と呼び、古くからある公設市場やいわゆるパパママショップ(家族経営の小規模店)のことをトラディショナルトレード(TT)と呼ぶ。現在国内全体ではMT:TTの市場規模の比率は10:90ほどであると言われており、市場の約9割は市場や個人商店を中心とするTTが占めている(ハノイ市やホーチミン市などの都市部ではこの比率は30:70になると言われている)。
外資の小売企業がベトナム市場に切り込んでいくならば、MTにおける競合に打ち勝つと共に、TTの顧客をMTへと誘導していく必要がある。
4.ベトナムの小売りを制するために重要な3つのポイント
①ターゲットの明確化(どの所得の層を狙っていくのか)
②自社のブランディング(ブランドの一般大衆への認知向上)
③サプライヤーとの信頼関係
特にサプライヤーとの信頼関係は会社全体の業績に大きく関係してくる。ベトナム・外資のサプライヤーは常に自分の商品が市場でどれだけ認知され、どれだけ大きなシェアを占めることができるのかに関心を持っている。そのため、果たしてその小売業者へ仕入れることでそれだけ自分の商品が認知されるのか、どれだけ小売業者が自社製品の販売に力を入れてくれるのかが最も気になるところである。
小売業者は仕入れた製品を必死で売り切る努力をしなければならない。そのためには、ただ商品棚に陳列するだけではなく、イベントやキャンペーンを通じて大々的に商品をアピールする、商品ごとに特徴を分けて売る店舗を分ける等の工夫を行い、そういった工夫を小売業者側からサプライヤーに対して提案することで、サプライヤーの信頼を得ることができるだろう。
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