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成長が続くベトナムの医薬品市場:経済発展に伴う疾病構造の変化・生活習慣病の増加

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医薬品市場は2023年にかけて年平均+10.4%で成長を続ける

人口約1億人を擁するベトナム市場は近年、GDPの年成長率は6~7%で推移しており、医薬品市場も高い成長率を示している。急速な経済成長に加え、医療保険の拡大や国民の高い健康志向により市場が拡大している。ベトナム人の健康志向はマレーシア、タイ、インドネシア、ミャンマーを大きく上回るという調査結果もあり、医薬品市場の成長を後押ししている。
経済産業省の調査結果によれば、ベトナムの医薬品市場は2018年時点で59億ドルに達しており、2023年にかけて97億ドルまでに成長する予測である。これはベトナム国内の医薬品市場は5年間で年平均+10.4%で成長を続ける計算となる。今回の記事では、ベトナムの健康水準、疾病構造、健康上の課題の観点からベトナムの医薬品市場の成長性をインフォグラフィックスを活用して俯瞰してきたいと思う。

ベトナム人口の高齢化と健康寿命の伸び

ベトナム人口の平均年齢は2018年時点で31歳となっており、日本人の平均年齢45歳と比較すれば、非常に若い。ベトナム人口の45%は30歳以下であり、現在のベトナムの人口ピラミッドは1970年時点の日本の人口ピラミッドと形がよく似ている。1970年時点の日本人の平均年齢は30.5歳であった。人口構造は日本と40~50年程ギャップがあり、過去の日本のように若い世代の人口比率が高い
このように若い年代の人口が多いベトナムであるが、徐々にではあるものの確実に高齢化は進行している。ベトナムでは2038年にかけて特に高齢化が進み、60歳以上人口の割合は20%以上に達する見込みである。ちなみに、日本人口の60歳以上人口割合は29%程度。
また、経済発展に伴う生活水準、医療水準の向上からベトナムの平均寿命は2050年までに80.4歳までに達する見込みだ。現在、ベトナムの平均寿命は73歳程度であるが、健康寿命は64歳と他国と比較すれば低水準に留まっている。ベトナムの高齢者の7割近くが農村部に住んでいると言われており、近代的な医療設備が整備された医療機関が都市部に集中していることもあり、多くの高齢者が適切かつ十分な治療を受けれないことが課題として残っている。

経済発展に伴う疾病構造の変化:非感染症の増加

次に、ベトナムの疾病構造・死亡要因を見ると、1990年時点では感染症の割合が26%と高かったが、2017年には感染症による死亡の割合は10.5%にまで低下した。一方で非感染症の割合は1990年の63.3%から2017年の79%にまで増え、非感染症の割合が大きいという先進国の疾病構造に近づきつつある。
2017年時点、ベトナム人の死亡要因を疾病別に見てみると、脳血管疾患(18.4%)、虚血性心疾患(10.7%)、気管・気管支・肺癌(5.86%)、糖尿病(3.8%)、慢性腎臓病(2.8%)が上位5疾病となっており、心血管疾患の割合が大きいことが特徴としてあげられる。ベトナムでは毎年約20万人が心血管疾患で死亡しており、18~65歳の成人における高血圧率は25%に達するという調査結果もある
1990年から2017年にかけては、「下痢、下気道、およびその他の感染症」等の「感染症」の割合が減少し、「心血管疾患」や「新生物」、「糖尿病、泌尿生殖器、血液、及び内分泌疾患」等の「非感染症」が増加している。

近年になり生活習慣病の患者が増加

ベトナムでは経済発展に伴い、糖尿病といった生活習慣病の割合が増えており、問題となっている。ベトナムでは現在約353万人の糖尿病患者が存在する一方で、7割近くの患者が未診断であり、糖尿病が発症した患者のうち、医療機関で治療を受けたのは29%程度にとどまっていると言われている。今後もベトナム国内では糖尿病患者が増加するとみられ、2045年まで糖尿病患者は630万人まで増加し、現在比で78.5%増加するという予測結果もある。
また、がん患者の内訳を見ると、肝臓がんが15.4%と最も高く、次いで肺がんが14.4%、胃がんが10.6%という内訳になっている。毎年、肺がんで亡くなる人は2万人を超えており、胃がんで亡くなる人も1万5千人程度の水準である
このように、経済発展に伴い、国民の所得向上が進むにつれて、食事や運動に関する日々のスタイルが変化し、疾病構造も変容しつつあると考えらえる

次回の記事では、引き続き、ベトナム医薬品市場の成長性を分析していきたい。主にはベトナムの健康問題、高い需要が見込まれる医薬品、現地市場プレーヤー、進出状況、流通構造などに焦点を当てていきたい。

ONE-VALUEについて

ONE-VALUEはベトナムに特化した経営コンサルティング会社として、これまで多くの日本企業のベトナム進出、M&A実施への支援に携わってきました。ベトナム進出支援の実務経験、各産業に対する知見と洞察、ベトナム政府・ベトナム民間企業とのネットワークを活かして、引き続き、多くの日本企業のベトナムでのビジネス支援を行っていきたいと考えています。ベトナムでのビジネス、事業展開、投資についてご関心のある方はぜひご連絡ください。

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